給付金(一般に死亡保険の保険金以外の商品で支払われるお金のこと)や保険金(死亡の際に死亡保険から支払われるお金のこと)を請求したにもにもかかわらず、お金がもらえなかったらさぞ驚かれることでしょう。さて、何故給付金や保険金が支払われないことがあるのでしょうか。
保険会社は、このような判断に精通し日常的に事務を処理しています。しかし、消費者にとっては困惑するばかりです。さて、その点について少し解説してみましょう。
(Ⅰ)不払いの分類
1)証券を確認するとそもそも請求した保障に加入していなかった
2)保障に加入していたが、請求した事実が保障の対象外
3)給付金の場合は、一般に契約加入後に発病した病気やケガが保障の対象ですから、契約前 に発病していた傷病に関する請求は対象外
4)告知義務違反
5)その他
大きく分けると以上のような理由で保険金が支払われません。
1)について
多くは消費者側の勘違いです。加入されている保障内容の確認を時々行っておく必要があるはずです。保険の募集人任せでは問題です。ただし、加入時にもらったはずであるパンフレット、約款は手元に残しておくべきです。約款を読むことは消費者にとって難しいことですので、パンフレットは分かり易く作成されていますので、後日保障内容を確認するためには最適な資料です。また募集人もお客様との面談記録や資料の配布に関して後日水掛け論が生じないように記録を残しています。なお、パンフレットは裁判の際の証拠資料にもなりますので保管をお勧めします。
2)について
例えば手術給付金が支払われる保障に入っていたのに、皮膚の腫瘍を日帰り手術で切除してもらって給付金を請求したが、給付金がもらえなかったという苦情は、非常に多くあることです。これは、手術給付金といっても保障している手術が限定されていることによります。
昭和62年以降生命保険会社で統一されていた手術給付金は、全ての手術が対象ではありません。
このような例以外に保険の約款には、それぞれの給付金支払について免責(支払いとしない規定)が細かく決められています。例えば泥酔が原因でケガした入院については入院給付金が支払ってもらえない、脳卒中で180日継続して入院しても全期間給付金の対象とならず、削減されるなど色々あります。
また、災害事故の給付金や保険金が支払われると思って請求したら、病気と認定され災害関係の給付金、保険金が支払われないことで苦情になることが多くありますが、保険の約款では、災害や不慮の事故について判断する基準が決められています。
3)について
死亡保険とは異なり、医療保険や三大疾病保険などは契約後に発生、発症した傷病が保障の対象です。特殊な保険金ですが、死亡保険には高度の身体障害状態になった場合に支払われる高度障害保険金がセットになっていますが、医療保険などと同様に契約後に発生、発症した傷病が原因で身体障害になった場合が対象です。したがって、契約前から発症していた傷病による入院や身体障害は、保障の対象となりません。
4)について
告知義務とは、加入時の告知書の質問に対して誠実に回答しなければなりません。回答していなければ告知義務違反として判定され、保険金、給付金が支払われません。
誠実にという点が、重要です。不誠実だから告知義務違反と認定されてしまいます。つまり、故意に回答しなかったり、重大な過失で回答しなかった場合です。あるいは回答されていても不十分な回答であった場合です。しかし、回答がされていなくても、回答しなかった理由が故意や重大な過失がなければ告知義務違反には問われないことになります。
一般的に告知義務違反の判定は、保険会社による調査が実施されます。告知がされない無告知の事実や過少告知の事実が確認されます。合わせて無告知や過少告知となった理由が故意や重大な過失であったことの確認もなされます。
5)その他
1)~4)の分類以外にも保険金、給付金が支払われないことがあります。保険料の支払いが滞って、契約が失効しているような例もあります。入院給付金の請求をされても入院の実態が正当な入院と判定されない場合など様々な場合があります。
(Ⅱ)消費者も賢くなりましょう
さて、このように保険金、給付金が支払われない場合があるわけですが、支払いをしない判断は専門家である保険会社が行っていますので、多くの場合誤ることはありません。しかし、商品が複雑化する中で、保険会社が判断を誤ることが稀にあるので、金融庁から数年前に生命保険会社各社へ支払再検証の指示がなされました。その結果一定の率で誤払いの判断が見つかりました。
このような事実があるので、消費者も賢くなる必要があるでしょう。
入院給付金の保障が1回の通算が120日までとなっている保障で130日継続して入院した場合は、10日間の入院部分は保障されません。この点に関しては、保険会社および消費者の間に理解の差はありえません。
しかし、手術給付金、入院給付金の免責事項、災害・不慮の事故の判定、告知義務違反における故意や重大な過失の判断は非常に難しく、またこれらの判断について消費者の理解と保険会社の理解がかい離することもありえます。つまり、約款の運用や解釈において食い違いがありえます。あたかも法律の解釈が、検察、弁護側双方で異なることはよくあるのと同じです。
したがって、不払いの場合には保険会社の判断を確認することは重要で消費者も賢くなる必要があります。保険会社も、このような問い合わせに対して誠実に、分かり易く説明する責任があるはずです。