平成25年度リサーチレビュー
第3巻第4号の内容 (Research Review Vol3 No4)
- 不払い審査における「他社が払った問題」
- 消費者向け研究報告解説
保険金や給付金の支払審査の結果、不払いの決定をお客様に伝えると、「他社では支払ってもらった」という声をお聞きします。つまり、会社によって支払いに差があったというお客様の認識です(報告の中では、”他社が払った問題“と呼びます)。どうしてこのようなことが発生してしまうのでしょうか。そもそも業界統一で商品を導入し販売していた時代(護送船団方式の時代)には、このような問題はほとんどありませんでした。 今回の研究報告では、お客様が会社によって支払いに差があると感じる原因を分析しています。結果として大きく2点取り上げ分析しています。 1.各社独自の約款のために会社による差が発生している点 2.支払い審査のプロセスや約款の解釈・運用が異なるため会社による差が発生している点の2点です。同じような商品、あるいは全く同じ商品名の商品でも実は会社によって中身が異なっていることがあるため、すなわち約款が異なるために当然支払いは異なってしまいます。お客様にとっては分かりづらい部分になります。また、同じ約款でも会社によって約款の解釈や運用は異なることもあります。以前は、生命保険協会で協議してなるべく統一した運用をするように各社努力していましたが、現在では各社独自の運用になってきています。護送船団方式の行過ぎた横並びを是正し、各社の努力により多様な商品の導入と消費者ニーズへの満足度向上が謳われ、究極は各社の責任において支払いをすることになっています。しかし、支払いに関しては、消費者に混乱を助長してしまったことも事実です。研究報告では、“他社が払った問題”の解決に向けた業界が取り組むべき対応についても提言しています。
第3巻第4号 RR2013VOL3NO4.pdf 2013年第3巻第4号
第3巻第3号の内容 (Research Review Vol3 No3)
- 約款の拘束力について
- 消費者向け研究報告解説
保険の契約をした場合に約款が渡されます。最近の行政の方針により読みやすい内容になっていますが、かなりの厚みのある小冊子になるため、実際に約款を読む契約者は数少ないでしょう。本報告では、約款を読んでいなくても習慣として保険契約が約款の記載に拘束される理由について解説しています。保険金の不払い時に約款を読んでいないと主張しても、多数の方と保険契約を締結している前提として約款の規定に従うことが習慣として合意されているわけです。一方、最近法務省で民法改正が検討されています。その中で約款の規定が新設される方向で議論が進んでいます。様々な契約において約款が契約に必要な要素となるための条件が検討されています。具体的には、約款の定義や約款の組み入れ要件、不意打ち規則、約款の変更、不当条項規則等の規定についてです。本報告では、それぞれの規定についてわかりやすく解説していますが、一般の消費者にとっていまのところ専門的な議論であり、詳細については、割愛いたします。平成27年に法改正予定ですので、改正法成立後再度解説したいと考えます。
第3巻第3号 RR2013VOL3NO3.pdf 2013年第3巻第3号
第3巻第2号の内容 (Research Review Vol3 No2)
- 柔道整復師と生命保険
- 消費者向け研究報告解説
民間生命保険の医療保険や傷害保障に加入されている方は多いと思います。しかし、柔道整復師の施術の一部に対してこれらの商品から給付金が支払われることをご存じない方も多いでしょう。おそらく、保険の加入時には商品に対して柔道整復師の施術に対する給付金のニーズは多くないはずです。ニーズが喚起されているどころか、十分な保障内容の説明を受けていないことが多いはずです。あくまで、柔道整復師の施術への給付はメインの保障ではなく付加的サービスに限りなく近いからです。本研究報告では、柔道整復師の制度的な問題をまず社会保障との関係で概観すると共に、昨今行政で議論されている内容を紹介しています。次の多くの消費者から集めた保険料で営まれている民間保険に対し、柔道整復師の施術への付加的給付が、健全性の維持に問題を与え始めている詳細についても紹介すると共にこのようなサービスを継続することについての問題に一石を投じています。民間保険は、任意加入が原則です。それ故に、加入時と支払い時にリスクの選択、つまり加入可否と支払可否を判断する査定が必要です。これにより多くの加入者の保険料が正しく運用され、保険料に過不足が生じることがないように運営されています。別の表現で言えば、引き受けする保険のリスクをコントロールすることです。しかし、本研究報告で紹介させていただいているのは、柔道整復師の最近の実態が、民間保険業のリスクコントロールにとって障害を与え始めているという概要です。保険のサービス低下という視点で本研究報告に批判される方がいらっしゃるかもしれませんが、根本的には柔道整復師の制度そのものが、公的健康保険である社会保険に対して一部に弊害を発生させているという現状認識が重要なのでしょう。
第3巻第2号 RR2013VOL3NO2.pdf 2013年第3巻第2号
第3巻第1号の内容 (Research Review Vol3 No1)
- 行政における不妊治療費用保障保険の議論について
- 消費者向け研究報告解説
民間の保険会社が不妊治療として行われている体外授精や顕微鏡授精(精子を顕微鏡下で卵子に注入する方法)などの生殖補助医療に給付金を提供してよいのか、行政で議論が始まっています。一般の方は、このような議論があるということを聞かれると不思議に思われるかもしれませんが、保険会社が給付してよいのは、傷害や疾病があることが原則で保険業法という法律で決まっています。原因の無い不妊症の方に対する不妊治療は、保険業法から逸脱した給付となる可能性があるため、議論が始まっているのです。合わせて、具体的な商品化する場合の課題が検討されています。少子高齢化や晩婚化で、妊娠へのサポートや不妊治療への対策は、国家にとっても大きな問題です。本来、国策として不妊治療へ援助すべきですが、不妊治療は高額化しており国が援助するとしても財源の面で限界があります。したがって、民間保険で商品化できないかという検討の要望があるわけです。今回の研究報告では、行政の議論の内容と不妊治療費用保障保険の解説および問題点について述べています。結論として、民間で保障を提供するには限界が多く、本来不妊治療対策は国が行うべき問題と考えられることです。民間保険会社も少子化対策に前向きに支援することは異論のないところですが、不妊治療にだけ特化した商品の提供は民間保険の原則論としてかなりハードルが高いという認識です。不妊症は疾病かどうか消費者の認識は様々で告知義務の対象として非常に微妙で、不妊治療を給付する前提で、不妊の方の既往や現病のある方に厳しい告知義務を課すことも慎重であるべきと考えられるのです。また契約後に児を得ることができたご夫婦にとって保険の継続は不要になるでしょう。そのため、保険期間を通じた保険料の負担について契約者間に不公平が生じてしまいます。したがって、当研究所としては商品化について慎重な姿勢です。今後の行政の議論を十分フォローすべきでしょう。
第3巻第1号 RR2013VOL3NO1.pdf 2013年第3巻第1号