3)未承認薬とCU制度

  ドラッグラグ、オーファンドラッグ、スイッチOTC薬、分子標的薬など薬剤に関連した様々な単語が、新聞や雑誌に飛び交っています。それぞれの解説は別の機会に譲るとして、表題の未承認薬とCU制度について少し紹介いたしましょう。

以前、がんの患者が自費で未承認薬を輸入し治療した話しが新聞に掲載されていました。記事は、日本における薬剤承認の遅れを指摘する記事でしたが、自費輸入で月に約100万円の費用がかかることを患者が嘆いていることも掲載されていました。自費で輸入する制度が完備されていなければ、薬剤の価格や手数料は売り手の言いなりです。しかし、日本で未承認薬にアクセスするには、自分で輸入するか未承認薬に理解のある医師に輸入してもらうかどちらかです。場合により安全性すら確認されていない薬剤の投与もありえてしまいます。

さて、諸外国を見回してみますとCU制度を導入している国が多くあります。逆に先進国でCU制度を導入していないのは日本ぐらいという状況です。CUとは、Compassionate Use の略です。患者が未承認薬にアクセスすることを単純に禁じるのではなく、逆に患者のアクセス権を保護するという制度です。未承認薬を国が承認し、保険適用するまでには臨床試験の多段階プロセスが必要で時間がかかります。その間、患者の意思として未承認薬を使用したいのであれば使用できるようにする制度がCU制度です。当然、健康保険適用外ですから費用は患者負担ですが、安全性が確認されていれば未承認薬を公的健康保険の医療と併用することを国が認める混合診療の制度がCU制度です。

 日本では、長年ドラッグラグの問題が批判されてきました。厚生労働省も真剣に課題解決に取り組み、成果があがりつつあります。これに加えて、ようやく2012年から日本でもCU制度の導入について行政において検討が始まりました。一部は、患者申出療養として形を変えた制度として日本でも導入される予定です(患者申出療養については別途解説いたします)。ぜひ、制度の実効性が進むことを当研究所でも要望するものです。勿論民間保険として費用負担できる商品を開発する可能性もあるでしょう。